3Dスキャンを完了した後、得られた生データは、モデリング・解析・3Dプリントに使用する前に処理が必要です。生の点群データにはノイズ、穴、不規則なトポロジー、重複表面などが含まれるため、後処理は3Dスキャンにおいて不可欠な工程です。本ガイドでは、MIRACOスキャナーのソフトウェアを用いた主要な後処理ステップ(自動編集、手動クリーニング、点群融合、メッシュ生成、テクスチャマッピング)を、ターンテーブル上の歯車を例に解説します。
後処理の準備
後処理を開始する前に、対象物が適切にスキャンされていることを確認してください。例として歯車をスキャンする場合:
- 歯車をターンテーブルに設置します。
- スキャンモードで「標準モード」を選択し、対象タイプを「一般」に設定します。
- 表面が反射性の場合は特に、露光レベルを適切に調整します。
注意点:
- MIRACOのプロジェクターは反射面や暗色表面の詳細をある程度捕捉可能ですが、スキャンスプレーの事前塗布を推奨します(キャプチャ精度向上のため)。
- ターンテーブル表面がノイズ源となる場合は、スキャン中に「ベース除去」機能を有効にし、不要な背景データを排除してください。
初期自動処理:ワンタップ編集
スキャン完了後:
- 「モデル」セクションに移動し、スキャンリストから対象モデルを選択。
- 「ワンタップ編集」を実行。
この機能は、ノイズ除去・点群融合・簡素化を自動化し、最適化された3Dモデルを生成します。散在ノイズの除去に効果的ですが、スキャン物に接続された部分(例:ターンテーブル接触面)は残るため、手動での修正が必要な場合があります。
手動クリーニング:不要要素の除去
選択ツールの使用
MIRACOソフトウェアでは、2つの主要な選択ツールを提供:
- ラッソツール: 自由描画で領域を選択。
- 矩形ツール: 矩形範囲で選択。
これらのツールで対象物に付着した残留要素を削除します。ただし、歯車とターンテーブルの接続部など、密着した不要要素の分離は困難な場合があります。
スキャン設定の改善
対象物と土台の分離を容易にするため:
- 歯車とターンテーブルの間に小型カップやプラットフォームを設置し、わずかに浮かせます。
- これにより、底部エッジの詳細キャプチャが向上し、後処理が簡素化されます。
再スキャン時は以下を実施:
- 「標準モード」を継続使用。
- 露光レベルを適宜調整。
- スキャン角度を戦略的に変更し、歯車の全側面・エッジを網羅。
高度な手動編集ワークフロー
融合(点群統合)
複数の生点群を単一の点群に統合します。2つの融合方法:
- 標準融合: 最小点間隔0.05mm、高詳細保持(処理時間増加)。
- 高度融合: 最小点間隔0.1mm、自動平滑化(表面一貫性向上)。
ヒント: 点間隔を0.3mm程度に設定すると、品質と処理速度のバランスが取れます。
分離(孤立要素の除去)
「分離比率」パラメータで、スキャンから外れ値(支持構造・散在ノイズ)を自動検出・削除:
- 低比率: 小断片のみ検出。
- 高比率: 接続された大型要素も検出。
注意: 適切な比率設定で、対象物の主要部分を保持しながら不要要素を除去します。
重複検出(冗長データの排除)
複数角度からのスキャンで生じた重複点群を削除し、厚み不均一や粗いテクスチャを解消します。デフォルト設定でほとんどのケースに対応可能です。
表面平滑化
視覚品質向上のため表面の不規則性を軽減しますが、歯車などの精密部品では過度な平滑化は避けてください(細部消失のリスク)。平坦面では強めの適用が可能です。
点群からメッシュモデルへの変換
メッシュ品質設定
- 高品質: 3Dモデリング向け(高三角形数・処理時間増)。
- 中品質: 一般可視化用。
- 低品質: 簡易プレビュー用。
穴埋め(自動補填)
スキャン時の死角によるデータ欠損を、周辺形状を分析して自動補填します。
警告:
- 歯車の穴など意図的な開口部を欠陥と誤認識しないよう、穴埋め比率は低め(例: 3%)に設定。
- 高比率設定は構造的特徴を損なう可能性があります。
追加メッシュツール
- 分離チェック(再実行): メッシュ変換後に残った微小断片を検出。
- メッシュ簡素化: ファイルサイズ削減のため三角形数を減少(過度な適用は形状歪みの原因)。
- メッシュ平滑化: メッシュ段階での表面滑らかさ向上(段階的適用推奨)。
テクスチャマッピング(カラースキャンのみ)
MIRACOのRGBカメラを使用したカラースキャンでは、メッシュ生成後に「テクスチャ」を選択。UVマッピング技術で色情報をメッシュ表面に適用し、リアルなカラーモデルを生成します。
注意: 「ワンタップ編集」使用時はテクスチャマッピングが自動適用されますが、後工程で変更があった場合は再適用が必要です。
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